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2018年05月15日 (火)
出港して約1週間
海洋研究開発機構 海底資源研究開発センター 資源成因研究グループ
グループリーダー代理 野崎達生
2018年5月9日 (水) 8時半に,Joides Resolution号はニュージーランド・オークランド港を出港しました.IODP Expedition 376航海の開始です!現在は,パイロットホールであるHole U1527Aの掘削・コアリングが終わり,次のHole U1527Bでのケーシングパイプを敷設しているところです.
今航海は,出港地のオークランドから調査地のBrother Arc Calderaまでわずか1日で着いてしまう距離なので,研究者は5月6日 (日) に乗船した後に,船上生活全般や安全に関する講習,ラボの説明や様々な機器のトレーニングを受けました.居室のトイレが隣の居室と繋がっていて4人で共用するシステムには驚きましたが,食堂・ラボ・娯楽室・ジムなど施設は十分に揃っていて快適です.また,出港までは毎日乗船者でオークランドの街に繰り出し,オークランドの夜を楽しく過ごしました.
乗船して種々のトレーニングを受けた後は,早速皆で議論を重ねて,どのように掘削コア試料を記載 (試料の産状・素性を詳しく観察・記録していく作業) していくかを議論していきます.今回,私はSulfide Petrologist (硫化物岩石学者) という役割で乗船しており,構造地質・火山岩・熱水変質などを記載するVisual Core Descriptionのグループで作業をしています.コア試料を記載する際には,鉱物のサイズとは何か?変質の組織とは何か?硫化鉱物の組織とは何か?そして,1つ1つの学術用語の意味は何か?ということを『延々と』議論します.これは,コアを記載する人間が共通の意識と基準に基づいて作業するのに必須の工程なのですが,普段の研究では人によって基準 (と好み?) が少しずつ異なります.なので,ある用語を記載に使うためのコンセンサスを十分に築いておく必要があるのですが,そのために何度も何度も何度も議論を重ねます.そして,採取されたコア試料によってさらに修正を重ねて記載作業を進めています.まだこの航海は始まったばかりですが,ボトムアップの議論に基づく意思決定のプロセスに,とても新鮮さを覚えました.
今航海の目的は海底熱水鉱床の深部まで掘削し,島弧の火山ガスが熱水にどのような影響を与えているか,揮発性元素の移動を観察するのが一番重要な目的です.Joides Resolution号で海底熱水鉱床を掘削するのは,ODP Leg 193航海以来の18年ぶり!何が起こるか予想も付きません.残念ながらパイロットホールのコア回収率は低調でしたが,研究者は皆,これから上がってくるであろう予想もせぬコア試料を心待ちにしています!!