今更ですが

今更ですが

3回目の投稿になります。前回の終わり方のテンションがおかしかったのですが、気になさらないでください。元気に船上生活を楽しんでおります。 さて、今更なのですが初回のタイトルが「ワイマス海盆(Guaymas Basin)は〜」となっていた点で、諸野さんに質問されたので、ここで皆様にもお伝え致したく思います。なぜ、「ワイマス」か問題です。Guaymasの綴りを見ますと、英語に堪能な皆様は、グアイマスじゃないの?と思われる方も多いかも知れません。私もむかしむかし、1990年代中頃に初めてこの海域の論文を読み始めた頃には、これどう読むんだ?と思っていたのですが、あるときどなたかから教えてもらって、以来、ワイマスと呼んでいます。メキシコ領内ですのでスペイン語でこの地名を読むのが正しいと思います。日本人はなるべく現地の人が呼んでいる地名をカタカナに置き換えることを慣例にしておりますので、そうなると、Gは発音せずに、ワイマス、となるようです。スペイン語で良くある男性の名前でJuanとありますが、あれはJを発音しないでファンとかワンとか呼びます。実際、アメリカ西海岸をカナダ国境近くまで北上したところにある海底拡大軸のJuan de Fuca Ridgeは誰しも、ファンデフカ海嶺と呼びます(これは英語圏の人もそう呼びます)。諸野さんから質問されたとき、少し心配になったので、メキシコから参加の研究者、マネットさんに聞いたところ、現地で「ワイマス」と発音することも確認できました。で、今回の航海でもう一つ楽しみだったのが、船内では皆さんどっちで発音するんだろうということでした。結果的にどうも半々みたいです。英語圏の方はグアイマスとどうしても発音してしまうように見えます。ちょっとネットで調べると、メキシコ観光局公式のホームページもグアイマスだったので驚きましたが… すみません、うんちくでした。 航海もいよいよ大詰めを迎え、掘削も残すところ一日となりました。研究のことはともかく(それに興味のある方は、是非、航海後一定期間経つとPreliminary Reportが公表されますのでご覧ください)、2ヶ月の船内生活(しかも外国の船)というものが全然想像できませんでしたが、あっという間とはいいませんが、無理なく過ごすことができました。私としては食事も問題ありませんでした(美味しいので食べ過ぎないようにするのが大変でした)し、12時間シフト制は確かにブラック企業っぽいですが、残業があるわけではないし、部屋に戻るとルームメートは反対のシフトなので個室同様に利用できてプライベート空間も保たれていますし、基本的にほとんど船は揺れませんし(これは海域にもよるかも知れませんが)。これまでの最長がJAMSTECの「かいれい」に45日でしたから、大幅に記録更新となりました。 とにかく、IODP航海に参加してみて感じたことは、「ビッグなサイエンスをするためにはお金は惜しまないぜ!」という雰囲気です。とにかくめっちゃクチャお金がかかっているのが実感できます。確かにこれくらいお金をかけて海底下何百メートルも掘って試料を取れば、想像もしなかったような大きなサイエンスができることを実感しました。油代が…とか言っている我が国の船が少しごにょごにょ…(自主規制) 下船したら一番に何がしたいかなとか、何が食べたいかなとか考えたりしますが、船内はシャワーだけですのでゆっくりと湯船に浸かりたいのと、新鮮な野菜に4週間ほどお目にかかっていないのでパリッとしたレタスなんかのサラダを食べたいですね。2ヶ月の航海ですとその程度のささやかなことで満足できそうです。   This blog post appeared first here on Nov. 10,…

ワイマス海盆(Guaymas Basin)は憧れの地でした

ワイマス海盆(Guaymas Basin)は憧れの地でした

年寄りが先陣を切って乗船レポートを書かせて頂きます。IODP(実際にはJ-DESC)とは大変に長いお付き合いなのですが、乗船研究者として実際にIODPのexpeditionに参加するのはこれが初めてです。今回は私にとって思い入れのあるワイマス海盆への掘削航海ということで、頑張って参加にこぎ着けました。 今回乗船するのは「ちきゅう」ではなく、「JOIDES Resolution号」(略してJR号、写真1)です。米国のUSIOが運用する船で科学掘削の長い歴史を持ちます。米国が運用する船ですが、数年先までスケジューリングされた多くのexpeditionをこなすため、まさに世界の海を巡っており、今回の上下船地となったサンディエゴはJR号にとって約20年ぶりの米国本土の港への着岸となったとのことです。 私が参加する航海(IODP Exp.385 ワイマス海盆のテクトニクスと生物圏)は南北に長いカリフォルニア湾の中心付近にあるワイマス海盆を研究対象としていますが、カリフォルニア湾海底には東太平洋海膨の北端にあたる海嶺の拡大軸が存在します。そのため、海洋底拡大に伴うマグマの貫入が盛んに起こるわけですが、湾内ということで堆積物の供給が多く、拡大軸が厚い堆積層で覆われています。そこでは、マグマが堆積層中にシル(sill)として貫入している場所が多くあるのですが、そのシルによって駆動される熱水活動があり、熱水と堆積物の相互作用が活発です。この様な場所で、石油に酷似した炭化水素(熱水性石油)が熱水と堆積有機物の相互作用で生成するのですが、それが世界で初めて発見されたのがこの海域です。私も大学院生だったとき、鹿児島湾で北西太平洋域の海底熱水系では初めての熱水性石油の生成現場を発見しましたので、ワイマス海盆の研究は沢山読ませて頂きました。そういった思い入れのある場所に実際自分が掘削航海に参加できて大変嬉しく思っています。 自分のことばかり書きましたが、9月17日にExp. 385参加者がサンディエゴでJR号に乗船、5日間のport callの後、22日の朝に出航。カリフォルニア半島の太平洋側に沿って南下し湾内に入り27日から掘削が始まり、現在2日目を迎えたところです。乗船してからport callの間は参加者全員でexpeditionの目的や各自の研究内容について話し合い、出港後は各自試料を受け入れるためのラボの準備に忙しく過ごしました。幸い、この間大変天候に恵まれ穏やかな海況の元、掘削を始められています。 This blog post appeared first here on Sep. 30, 2019.