ワイマス海盆(Guaymas Basin)は憧れの地でした
年寄りが先陣を切って乗船レポートを書かせて頂きます。IODP(実際にはJ-DESC)とは大変に長いお付き合いなのですが、乗船研究者として実際にIODPのexpeditionに参加するのはこれが初めてです。今回は私にとって思い入れのあるワイマス海盆への掘削航海ということで、頑張って参加にこぎ着けました。 今回乗船するのは「ちきゅう」ではなく、「JOIDES Resolution号」(略してJR号、写真1)です。米国のUSIOが運用する船で科学掘削の長い歴史を持ちます。米国が運用する船ですが、数年先までスケジューリングされた多くのexpeditionをこなすため、まさに世界の海を巡っており、今回の上下船地となったサンディエゴはJR号にとって約20年ぶりの米国本土の港への着岸となったとのことです。 私が参加する航海(IODP Exp.385 ワイマス海盆のテクトニクスと生物圏)は南北に長いカリフォルニア湾の中心付近にあるワイマス海盆を研究対象としていますが、カリフォルニア湾海底には東太平洋海膨の北端にあたる海嶺の拡大軸が存在します。そのため、海洋底拡大に伴うマグマの貫入が盛んに起こるわけですが、湾内ということで堆積物の供給が多く、拡大軸が厚い堆積層で覆われています。そこでは、マグマが堆積層中にシル(sill)として貫入している場所が多くあるのですが、そのシルによって駆動される熱水活動があり、熱水と堆積物の相互作用が活発です。この様な場所で、石油に酷似した炭化水素(熱水性石油)が熱水と堆積有機物の相互作用で生成するのですが、それが世界で初めて発見されたのがこの海域です。私も大学院生だったとき、鹿児島湾で北西太平洋域の海底熱水系では初めての熱水性石油の生成現場を発見しましたので、ワイマス海盆の研究は沢山読ませて頂きました。そういった思い入れのある場所に実際自分が掘削航海に参加できて大変嬉しく思っています。 自分のことばかり書きましたが、9月17日にExp. 385参加者がサンディエゴでJR号に乗船、5日間のport callの後、22日の朝に出航。カリフォルニア半島の太平洋側に沿って南下し湾内に入り27日から掘削が始まり、現在2日目を迎えたところです。乗船してからport callの間は参加者全員でexpeditionの目的や各自の研究内容について話し合い、出港後は各自試料を受け入れるためのラボの準備に忙しく過ごしました。幸い、この間大変天候に恵まれ穏やかな海況の元、掘削を始められています。 This blog post appeared first here on Sep. 30, 2019.